なめらかな呼吸で歌おう。もっとレガートな呼吸で話しなさい──
そんなふうに言われたことはありませんか?
よく聞くアドバイスですが、実際に体で体感し、身につけるのはなかなか難しいもの。
「レガートな声の表現」は、初心者にとっても、実は上級者にとっても、永遠のテーマです。
今回は、初心者でもできる、レガート発音・レガート唱法のためのやさしい練習法をご紹介します。(2025/6完全リニューアルしました)
浜渦式【レガート発音・唱法】のための基本ポイント
1.下の歯の中心に息を集めて、強く粘りのある息をつくる
普段から「下の歯の中心に息を当てる」意識を持ってみましょう。例えば、歯笛を「シーシー」と吹くイメージ、サシスセソの「シ」よりも、シャシシュシェショの「シ」のイメージです。
ほんの少し下アゴを前に出して、上下の前歯を軽く合わせる。これだけで呼吸も声も体の使い方も変わってきますよ。一緒に首も前に出ないよう、注意してくださいね。
この方法を身につけると、息が詰まったり飛び出したりせず、適度に喉や口腔内にとどまり、どんな発音も滑らかに(レガート)、高い音への移行もスムーズになります。
2.共通語(標準語)の罠に注意
日本語の「共通語(標準語)」は、自然な呼吸の流れよりも発音やイントネーションの正しさを優先して作られているため、呼吸の自然な流れとズレが生じやすいのです。多くの歌詞や台詞は標準語ベースなので、この矛盾を理解し、呼吸の粘りとつながりを意識して練習することが重要です。
3.呼吸の粘りが伝わる話し方・歌い方の実例
漫画に出てくる欧米の方が話す「英語なまりの日本語」のように、発音は完璧でなくても滑らかで自然に聞こえることがあります。これは、正しさよりも呼吸の粘りとつながり(レガート)を優先した話し方だからです。
実際に、カーペンターズが来日した際、日本語で歌った曲は発音の正確さは完璧ではなかったものの、日本人以上に美しい発音の響きでした。それは呼吸の流れが非常に美しかったからです。人は実は、発音の細かい正しさよりも、呼吸の美しさや声の流れを無意識に感じ取って理解しているのです。
また、名俳優やベテラン声優の多くは曖昧な発音を個性として残しつつ、意味や感情を自然に伝えている方が多くいます。これも呼吸の粘りと滑らかさがあるからこそ実現できるのです。
かの名女優・声優、岸田今日子さんのナレーションなど、母音がほとんど聞こえないように話すシーンでも、それと気づかせず、実にはっきり言葉も伝わり、感銘を受けたものです。
レガート唱法・発音の核心
大切なのは、息の粘りを呼び込むような発音、滑らかな発音を呼び込むような呼吸を身につけること。これがまさにレガート発音法・唱法の核心です。
どんな子音・母音でも、口を開けている時も、下の歯の中心に一定の息の量・強さ・流れを集め続ける意識をしてみてください。
それだと発音が変になる?大丈夫です。そのあと、その息を維持しつつ、発音を正しくしていくのです。
息ができていないのに、発音だけ正しくしよう、滑舌だけよくしようという人やスクールもよく見受けられますが、それでは発音は正しいのに声もいいのに、ぶつぶつ切れたり、何を言っているのかわからない人になりかねません。
静かにできる発声練習① 拗音で“レガートな息”をつかむ
レガートで滑らかに歌いたい——そんな方にこそ試してほしいのが「拗音(ようおん)」を使った発音・発声練習です。
これは、声を出さなくてもできるうえ、呼吸の流れ・息の方向性・レガート感を同時に感じられる、浜渦式メソッドらしいユニークなトレーニングです。
拗音って何?
拗音(ようおん)とは、「きゃ」「しゅ」「ちょ」など、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」がついた音のことです。
例:きゃ・きゅ・きょ/しゃ・しゅ・しょ/ちゃ・ちゅ・ちょ など。
これらの音は、一音の中に2つの要素(子音+母音)が含まれていて、息の“流れ”や“つながり”を自然に意識しやすいのが特長です。
日本語は方言は滑らかな呼吸づかいが持ち味なものが多いのですが、50音表に表されるように、「子音+母音」のワンセットのイメージが、「無意識に呼吸を止めて、ブツ切れにしまう傾向」を生んでしまいます。
しかし、このように拗音を挟むことで、子音→母音→子音…の息の流れを掴みやすいのです。
おすすめの練習例
この練習は、息の流れと口の動きをシンクロさせることが目的です。まずは声を出さず、息と口の動きだけでやってみましょう。
- 「しゅー」「しょー」などを息だけで(なるべくゆっくり)
- 次に、「ぢぇー」「しぇー」「ちぇー」なども試す
- さらに変化球:「ショレェ」「ヂェンヂェン」「チュンチュン」なども(笑)
「ふざけてる?」と思うくらいがちょうどいいんです(笑)
でも実は、こういう遊びの中に、自然な息の方向性や脱力を引き出し、身体が自然に反応する大きなヒントが隠れているんですよ。
息だけでやって、息の流れが一定になったと感じたら、少しずつ母音を足していきます。
もし声が鳴ったり鳴らなくても大丈夫です。人はむしろその息の流れを聞いていると思ってください。
これができたら、より発音自体もよくしていきましょう。
声を出すと、呼吸音は聞こえにくくなり、口を開けると、下の歯に集まっていた息の音も感じにくくなりますが、下の歯の中心に息が通っているイメージを持ち続けましょう。
この練習で得られること
- 息の流れと音のつながり(レガート)が体感できる
- 喉を締めずに音を導く発音が身につく
- 声を出さずにできるので、疲れない・どこでもできる
※レガートとはただ声が繋がっているということではありません。
たとえ、声が途切れても,息の流れが繋がっていること、それこそレガートの正体です。
うまくいかないときは…
体や喉に余計な力が入っていると、発音がぎこちなく感じられるかもしれません。そんなときは、以下の記事も参考にしてくださいね。
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