正しい発音・発声・呼吸…。
最初から「正解」を出そうとする人は、
たとえ正しくても、なかなか表現にはならない。
なぜなら、それを描く“キャンバス”を持っていないからだ。
描く場所がなければ、正解であることが意味を持たないのだ。
大切なのは、体内にある空間というキャンバスの存在を認識し、
どんな声や発音が“描かれるか”を、まるで他人事のように観察する力を持つこと。
──これが、俯瞰するということだろう。
体の中に、表現の器となる「キャンバス」と、
そこに描かれる「動く声」の層の両方が見えてくることで、
人は自分の力で、自分の今の状態を認識できるようになり、
何を、どう整えればいいのかがわかるようになる。
これが、「本当の表現」のはじまりであり、
自分の中から「本当のうまさ」を育てられる人になるということだ。
上手くても伝わらない人。
上手くなくても伝わってしまう人。
その差は、ここにある。
そしてやがて、後者はうまさでも前者を追い越していく。
ミスを恐れ、周りと違うことを恐れる人も、
自分というキャンバスを縮こまらせて、ただ正解を出そうとしてしまう。
それでは個性も埋もれてしまう。
私がボイストレーナーとして皆さんにお伝えしていることは、
自分で自分だけの正解を見つけられる方法です。
これが正解です、あなたは間違っています。
…こんなのは、レッスンでもなんでもない。
私はそう思うのです。