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ミックスボイスとは「裏声と地声を混ぜる声」ではなく「楽器として整った体から生まれる普通の声」である

ボイトレメソッド&練習法

「色んなボイトレ動画で、ミックスボイスって“裏声に地声を混ぜろ”って言いますけど、どうすればいいかよくわかりません…」

「混ぜようとしても、どうしても引っかかったり、途切れたり、急に地声になったりします」

そんな声をよく耳にします。

「裏声に地声を混ぜろ」…そう教える気持ちはわからなくもないのですが、これはちょっと危険なアドバイスです。

なぜなら、“地声が混ざる可能性の高い裏声”“決して混ざらない裏声”があるからです。

前者ができている人は、言われなくても自力でミックスにたどり着けますが、後者の人は、当然、地声と混ざるはずはないからです。

いえ、そもそも「混ざる」という言い方自体が誤解を与えてしまいます。

裏声と地声のちょうど間くらいだから、絵の具を混ぜるようなイメージで「混ぜる」と言ってしまいがちですが、実際には混ぜるものではありません。

また、「裏声」「地声」という言葉自体にも、明確な定義があるわけではありません。

今回は、裏声・地声とは何か?使える声・使えない声とは何か?を掘り下げながら、本当のミックスボイスの正体について、体の使い方や声帯の状態の関係から解説します。


裏声か地声かより、使えるか使えないかで考える

いきなり厳しい言い方になりますが、声には使える声と使えない声があります。それは裏声でも地声でも同じです。これはただ立派な声だとか、綺麗な声であればいいということではありません。

  • ✅ 使える裏声 … 体が楽器として機能した状態で出される裏声
  • ❌ 使えない裏声 … 気道や肺周りが緩み、ただの気の抜けたような声
  • ✅ 使える地声 … 楽器の形を保ちながら、自然に出せる地声
  • ❌ 使えない地声 … 息が止まり、喉に負担がかかるような苦しい声

つまり、裏声か地声か、ミックスかというラベルよりも、どんな状態の体から生まれた声かが本質なのです。

よく「裏声で歌うのは逃げている」とか、「地声で歌ってはいけません」なんて言う人もいますが、それが本当なら歌が非常に窮屈で、自由のない苦しいものになってしまうはずです。

では、裏声・地声とはいったい何か、楽器として機能しているからだとは何か、解説していきましょう。


裏声・地声とは一体何か?

裏声か地声かは、声帯の厚さ(薄さ)の変化で決まります。

声帯が薄く、振動が首や胸に伝わらないのが一般的な裏声。逆に、少し厚く閉じ、振動が伝わるのが地声です。

しかし、声帯は意識して動かすことはできません。

意識ではなく、想像力によって、声帯は自然に反応するようになるものです。

ですから、私たちが作るべきなのは、声帯そのものではなく、その声帯が自然に働く「体という楽器の状態」なのです。


声帯や横隔膜が自由に動く空間を与える=体の楽器化

体という楽器の状態とは、口腔・気道・肺などの空間が、つながりを持ったまま広がっている状態です。

その空間を縮めたり固めたりせず、一体となって開かれたまま保つこと──これが「楽器の形」を保っている状態です。

この空間があることで、やがて声帯や横隔膜、舌などが自由に動くようになり、音色・強弱・息遣い・感情などが自然に表現されます。空間が自由な絵を描くキャンバスとなるのです。

体の楽器化については以下の動画をご参照ください。

声帯が動き出すのを待てるか

空間が作れたとしても「やがて動き出す」のであり、声帯や横隔膜がすぐに反応してくれるとは限りません。

想像力で反応を「待つ」必要があるのです。

空間を作れない人、動き出すのが待てない人は、空間を縮め・固め・蓋をして、無理に声を出そうとする傾向があります。

これはピアノで手が届かないからといって、ピアノの方を動かして手に近づけるような行為です。

例えば、裏声では胸が縮み、地声では喉が詰まる──そんな状態では、一つの楽器としての連続した音は生まれません。

一方、体の空間が安定していると、自分という、一つの楽器としての響きの統一性を保ちつつ、声帯や横隔膜は自由に動き、色んな音色や音域、音量を出せるようになります。

同じ楽器としての音色の中から、色んな響きや音色の音が生み出す。これはピアノでもトランペットでも、弦楽器でも同じことが言えますね。

裏声だろうと地声だろうと、体内の空間を楽器の形として保つこと。
裏声だろうと地声だろうと、楽器の形を変えないこと

空間とは感情や技術ののキャンバス・器とも言えます。以下の記事もぜひ参考にしてください。

https://song-voice-life.com/expression-utsuwa/

「混ぜる」のではなく「声帯の形が変化する通過点の声」

安定した楽器の状態を保つことで、やがて声帯や横隔膜が自由に動き出すことはおわかりいただけたと思います。

その結果、裏声 → ミックス → 地声へと自然に移行できるようになります。

つまり、ミックスボイスとは特殊な声ではなく、声帯の薄さの変化の「途中の声」なのです。裏声でも地声でもない途中だから、ミドルボイスなどとも言います。

簡単に言えば、普通の声。普通なのに伝わる、普通なのに美しい──そんな声です。
磨き上げた楽器からでる、声帯の厚さが中庸な状態。これは濁声であろうと、掠れ声であろうと、伝わる美しい声となります。

  • 裏声から少し厚くなった声帯の状態
  • 地声から少し薄くなった声帯の状態

その中間に、同じ楽器の中で自然に生まれる声がある。それがミックスボイスの正体です。

とは言いましても、ミックスボイスやミドルボイスというのは、定義があるわけではありませんし、人によって指す内容が微妙に違うことも珍しくはありません。
この辺りも混乱や言葉が一人歩きする原因でしょう。

ただ言えることは、きちんと楽器化した体の中で、生まれた息も声も、全て使えるようになる、そのことを知った人は、想像力であらゆる声を出せるようになる…という、とても単純な事実があるということです。


結論:ミックスボイスは「普通の声」である

  • 🎯 ミックスボイスは「体が整った人」から最初に出る普通の声
  • 🎯 混ぜるのではなく、「裏声と地声を自由に行き来する中間の声」
  • 🎯 裏・地声という分類よりも、体が楽器化されているかが本質

そして、体が楽器として整っている状態とは、人間としてのバランスが取れた状態でもあります。

だから、歌うだけでなく、話す・踊る・伝えるなど、すべての表現の土台になるのです。

普通の声なのに、なぜミックスボイスがもてはやされるようになったのか?
それだけ、体の内部を楽器として保ちつつ、その中で偏りのない中庸な声を出すということ(=基礎)が難しいということです。

体を開き、その中で究極のバランスをとった中庸の声。これが究極の目指すべき、普通の声=ミックスボイス=ミドルボイスというものです。

この最初の基礎を確立してしまえば、そのバランスの延長線上で、強い声、高い声も出せるようになるのです。


「ミックス=混ぜる」ではない

裏声に地声を混ぜる…──それは、時に危険な考え方となります。

ミックスボイスとは、整った体から自然と生まれる「連続する声」の一部。裏声と地声の声帯の厚さの中間、途中…つまり、究極の基礎です。

それを言葉だけ取り上げて、特別視したり、生徒集めの道具にするようでは、あまりにも本質から離れています。

確かに基礎という言葉を使うと、なんとなくしんどいイメージや内容がぼやけてしまいます。
しかし、ここで基礎とは何かはおわかりいただけたはずです。

今こそ、本当の「声の基礎」に目を向けるべきときなのです。


※前回の記事もあわせてご覧ください: 「そもそもミックスボイスって何?──多くの人が誤解するその正体とは」

 

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