生徒さんから、こんなご質問をよく受けます。
「焦ったり、緊張した時どうしたらいいですか?」
「失敗するのが怖いです」「緊張しない方法を教えてください」
もちろん、「慣れるしかない」「経験を積んで、自信をつける」というのも、間違いではありません。
でも、それは今まさに緊張して、焦って、困っている人にとって、すぐに役立つアドバイスにはなりませんよね。
「自信をつけろ」と言われて、自信がつくなら苦労しません。
では、今この瞬間に緊張している時、どうすればいいのか。
今日は、そんな時に私自身も実践している方法を書いてみようと思います。
それは、自分を「実況」して、「解説」することです。
私も、「3人減った」だけで焦ります
最近、YouTubeの登録者が500人くらい増えました。
(ありがとうございます!)
…ところが、そこから3人くらい減っただけで、
「あれ? 昨日の動画、何かまずかったかな?」
なんて思っている自分がいました。
500人増えて、3人です。
冷静に考えれば、そんなことで一喜一憂しても仕方がない…。
そんなことは、私もわかっているつもりです。
ちょっと活躍しているYouTuberなら、500人増えたなんてのも誤差の範囲でしょう。
でも、気になるものは気になるんですよね。
焦った時は、自分を「実況」してみる
そんな時に、私がよく実践することがあります。
自分を「実況」してみるんです。
実況:
「さあ浜渦選手、わずかな数字の変化に動揺しております」
「どうやら昨日の動画に原因があるのではないか、と考え始めたようです」
そして、もう一人。「解説者の自分」も登場させます。
解説:
「いやあ、これは仕方ないですよ。現役でやっていれば気になります」
「気にするな、と言われて気にならなくなるものでもありませんからね」
「さて、この状況を彼が次にどう活かすのか、見ていきたいですね」
これをしばらく続けていると、
「ああ! どうしよう!?」だったものが、
「さて、どうしようかな」に、少し変わっていくんです。
同じ「どうしよう」でも、まるで違う
「ああ、どうしよう」は、
失敗したらどうしよう。嫌われたらどうしよう。今日うまくできなかったらどうしよう。
という、ほとんど解決とは関係のない「どうしよう」です。
言ってみれば、「どうしようもない」ことに対する嘆きに近い。
でもそれが、「さて、どうしようかな」に変わることで、次の一手を考えられるようになってきます。
無理にポジティブにならなくてもいい
ここで大切なのは、焦りや不安を、無理に「前向きなもの」へ塗り替えることではありません。
焦っているなら、「かなり焦っているようですね」でいい。
不安なら、「不安になっていますね」でいい。
落ち込んでいるなら、「いやあ、浜渦選手、相当へこんでおります」でいいんです。
「これは成長のチャンスだ!」「こんな経験ができて幸せだと思わなくちゃ!」と、
思えるはずもないのに無理に思おうとする必要はありません。
実況は、今の自分を否定もしなければ、美化もしません。
ただ、今そこで何が起きているのかを、ありのままに見る行為です。
それだけでも、困っているだけの自分との間にほんの少し距離ができます。
「今日は調子が悪い」時も実況してみる
たとえば、今日はなんだか調子が悪い。
「今日、うまくいかないかもしれない」――そんな不安が急に出てくることがあります。
その時も、実況してみます。
実況:
「今日うまくいかないかもしれない、と焦っていますね」
「本人は、それを“調子が悪いからだ”と考えているようです」
すると、解説者の自分が少し離れたところから言います。
解説:
「いやいや、急に不安になって焦ることは誰にでもありますよ」
「仮に本当に調子が悪かったとして、その中で今日は何ができるでしょうね」
不安そのものが、なくなるわけではありません。
でも、不安だけが、自分のすべてではなくなってきます。
私は「緊張しない方法」を探してきたわけではない
私はもともと、かなりのあがり症です。
初めての生徒さんのレッスンでは、今でも心臓がバクバクしていることがあります。
本当は、もともとテンションの高い性格でもありません。
それでも不思議なことに、生徒さんからは、
「緊張がほぐれました」
と言っていただけます。
私自身が緊張していることに、気づかれないことも多い。
もちろん、緊張していないふりをしているわけでもありません。
振り返ってみると、私は長い間、「緊張しない方法」を探してきたのではなく、
「緊張しても大丈夫な方法」
を探してきたのだと思います。
実況と解説も、その一つです。
だからきっと、生徒さんも私自身も、まずは、
「あ、ここは緊張しても大丈夫な場所なんだ」
となってくれる。
すると少しずつ、
「あれ? じゃあなんであんなに緊張していたんだろう」
と変わっていくのではないかと思っています。
いきなり「緊張しない」を目指すのではなく、まず「緊張しても大丈夫」にする。
その先に、本当に緊張がほどけていく瞬間が訪れるのではないでしょうか。
「冷静になれ」と言われても、できない時がある
困った時は焦らず、冷静に考える。今できる最善手を考える。
そんなことは、言われなくても、誰でも知っていることでしょう。
でも、それができないから困る。
「冷静になろう」と思えば思うほど、余計に焦ってしまうこともありますよね。
そんな時は、無理に冷静な人になろうとせず、
自分の中に「実況席」を作ってみる。
一度試してみてくださいね。
きっと、損はないと思います。
本番でも「実況・解説」は役に立つ
これは、実際にお客さんの前で歌ったり、演じたりする時にも役に立ちます。
● 選手としての自分
一生懸命、歌ったり演じたりしている自分。
● 実況する自分
客席や共演者、その場全体を見ながら、今何が起きているのかを感じ取る自分。
● 解説する自分
それを瞬間的に分析して、「今はこうした方がいい」と自分自身に返していく自分。
もちろん、本番中に頭の中でいちいち言葉にして考えているわけではありません。
慣れてくれば、それはもっと無意識に、もっと瞬間的に起こるようになります。
自分だけに入り込みすぎず、かといって自分から離れすぎない。
演奏や演技をしながら、その場全体とつながっていく。
私にとって「実況・解説」は、緊張した時の対処法であると同時に、本番で自分を見失わないための方法でもあります。
これができているなと感じたとき、きっと、
「表現ってこんなにも楽しいものだったのか」
と、改めて思える瞬間が訪れるでしょう。
私は、それをお伝えしたいのです。
焦っている自分を、追い出さなくていい
選手の自分は、焦っていてもいい。
落ち込んでいてもいい。
不安になっていてもいい。
ただ、実況する自分と、解説する自分まで、一緒にいなくならないこと。
私は、これが意外と大切なのではないかと思っています。
実況と解説がいれば、自分の中で、一人ぼっちにならない。
焦っている自分に対して、「そんなことで焦るな」と言うのではなく、
「ああ、焦ってますね」「そりゃ焦ることもありますよ」と、少し離れたところから見守ってやる。
「ああ! どうしよう!?」
から、
「さて、どうしようかな」
へ。
ほんの少し距離ができるだけで、次の一手が見えてくることがあります。
焦らない人にならなくてもいい。緊張しない人にならなくてもいい。
焦っていても、緊張していても、それでも大丈夫な自分を育てていく。
そうすると、緊張が心地よい緊張に変わったり、あるいは、
「あれ、そもそもこんなに緊張しなくてもよかったのか」と思えるようになるかもしれません。
そして、それこそが、本当の自信につながっていくのではないでしょうか。
これは実際、お客さんの前で歌ったり演じたりするときにも役に立ちます。
一生懸命歌っている自分。
客席や共演者など、全体を見て実況する自分。
それを無意識に、瞬間的に分析してより良くするよう自分自身にアドバイスする自分。
私は、その方法をこれからも探していきたいと思います。
