この記事でお伝えしたいこと
- 言いたいことを言っても伝わり、許されるひとを目指す
- たとえ好かれなくても「なぜか認めざるを得ない歌手」を目指す
- この人が言うとなぜか「はい」と言いたくなる人間を目指す
ハウツー本の甘い罠
ボイストレーナーの浜渦です。昨今書店には「人が納得する魔法の言葉」とか「話し方を変えれば得をする」というようなハウツー本をよく見かけます。
しかし、その甘い罠にかかってあとで苦労する人はかなりいらっしゃいます。では何を変えればいいのか、何を変えてはいけないのか。ご一緒に考えてみてください。
これは歌い手をはじめとする表現者はもちろん、呼吸をして生きる全ての方にぜひ知っておいてほしいことです。
解けない魔法はない
「こう言えば相手に伝わる」というフレーズや言葉は、時に便利なものですが、それに頼り過ぎてはいけません。
「頭」で覚えても、それに「実」が伴っていなければ、やがて、その言葉が自分の哲学や深層から生まれたものではなく、頭で考え、他人や世間の言葉や流れから選択したことがバレてしまうでしょう。そうすると、逆に「言葉だけの浅い人間」と取られかねません。
結婚するまで「は」甘い言葉をかけ続ける男
こんな人間はいまや少ないとは思います。結婚するまでは「きれいだよ」「君ほど素晴らしい女性はいない!」といいながら、結婚式も終わって早ければ数ヶ月で「きれいだよ」はおろか「ただいま」も言わなくなる___よくある話ですね。
本人は別に「結婚したらこっちのもん」とは思っていないでしょうが、知識を自転車操業的に回していたのをやめただけ、というのが正直なところかもしれませんね。
しかし、言葉だけ変えて相手の気を引くとはそういう危険があることに注意しなければなりません。
褒め上手と「おだて上手」の違い
褒め上手とは、言葉の通り、相手の長所を見つけて、自然に「本当にそう思っている」と伝えるのが上手なことです。
しかし、これも注意していただきたいのです。「褒め上手になろう」と謳って「褒め上手になる10のポイント」や「内面を褒めよう」などというハウツー本などが溢れてしまうわけですが、無理に褒めて「おだて上手」になってしまってはいけません。
つまり、別にそれが相手のいいところでなくても、できてしまうわけですね。ではいったい本当に大切なことはなんなのでしょうか。何を目指せばいいのでしょうか。
人は相手の呼吸を聞いている
大切なのはなるべく本音で話しても相手にその真意や想いを伝え、そして納得し合うことです。本当の褒め上手はそのことをわかっていますし、相手も、なんとなく、それが本物かどうかはわかるものです。
気持ちは呼吸に宿り、それをひとは感じ取るのです。
「気持ち=呼吸=声」です。
「褒めることに一生懸命」ではひとを惹きつけられない
これはボイストレーナーの私にとってはものすごく大切な点です。トレーナーのキャリアの頃は恥ずかしながら、生徒さんに辞められたくないと言う気持ちもあったのでしょう。なんとなくレッスンが終わってしまった時は、対して進歩もしていないののに「今日はここがとても良かった」と大げさに言ってしまうことがありました。
それは自信のなさの表れでもあります。もちろん、生徒さんもそれを少しずつ感じ取って行ったことでしょう。本当に申し訳ないことをしていました。
そんなトレーナーに付いていきたいと思いますか?^^;
どんな業界でも本当に上に立つ人や、一人でも堂々とやっていける人は、褒め上手であるとともに「言いたいこともきちんと言う」ことを忘れてはいません。
それができない人が、他人を動かし、時に心酔させ、この人のためならと本気で思わせることができるでしょうか?相手が家族ならなおさらですし、第一いうべきことを言わないのは、大きなストレスとなって溜まっていきます。
本音で話そう
やはり本音で、しっかり、ときには相手の欠点を指摘する必要もあります。それも「なあなあ」とか「なんとなく」ではなく。
しかし、単にただ言いたいことを言っておしまいでは、相手が「怒って終わり」となりかねません。
人は声や呼吸を通じて「相手の呼吸」を聞き、そこから「相手の想い」を感じ取る能力があるからです。
相手に呼吸を届けよう
繰り返しますが、人は言葉や声を通じて呼吸を聞いています。この呼吸を変えてやりましょう!人に伝わる呼吸に。
言いたいことを言っても「許される人」に
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- 言いたいことを言ってもなんとなく許せるひと
- あんまり上手いわけでもないのに「なぜか好きな歌手」
- この人が言うとなぜか「はい」と言いたくなる人
…そんな方がたまにいらっしゃいます。その多くは(あくまでトレーナーとしての経験からですが)やはり呼吸がすばらしいです。そういうひとは・・・
そしてその呼吸が生まれる体という楽器が揺るがないということです。
相手と自分の「息の音」を聞こう
呼吸というと、すわ「腹式呼吸!」という方が多いのですが、その前に、相手の言葉の中に、そして自分から発する声や言葉の中に呼吸を聞く努力をしてみてください。
もちろん、息の音は小さいものですから、話し声にかき消されてしまいます。ですからまずは感じるのです。
説得力や伝達力、そしてどんな声が出るかはこの「呼吸の時点」で決まっています。呼吸音が汚いのに、美しい声や説得力のある声には繋がらないのはお分りいただけると思います。
相手に伝わる声と呼吸の練習法
当たり前といえば当たり前ですが、声は呼吸から生まれます。そして、呼吸は体から生まれます。美しい呼吸を作るためにまず大切なのが、のどと体を開いて、体を楽器化することです。
喉と体の開き方はこちらをご参照ください。
腹式呼吸の効果とワナ
ここでやっと腹式呼吸の登場です。腹式呼吸とは、開いた喉と身体を動かさず、保つために行う呼吸法です。これを理解していないと、閉じた喉と固まった身体を保つというとんでもない逆効果を生んでしまいます。
この腹式呼吸の罠にはまらないように気をつけましょう!
喉と身体を適切に開くと、腹式呼吸は自然に半ば自動的に始まり、呼吸音は美しくなり、そこに声を載せていく。これが浜渦メソッドの大きなポイントです。
呼吸に声を載せる練習
- 身体を開く
- それを保つ呼吸をする
この2点ができれば、すでに腹式呼吸と声を出すための楽器の準備はできています。あとはこの2点を一切崩さずにこえが出るまで我慢ができるかが勝負です。
身体も呼吸も良いのに、声を出す瞬間に身体も呼吸も崩れてしまう人もいます。
こうなると「声をだすまでは良かったのにねえ」という残念なことになってしまうんです^^;
こちらをぜひ参考に練習してみてくださいね
でも、辛抱強く練習してください!数ヶ月で自分の変化がしっかり感じ取れ、きっと素晴らしい声、呼吸だけでなく、説得力と伝達力、良い姿勢や演技力も手にはいりますよ!
でもこの我慢ができない方は何年、何十年やっても、どれだけ腹式呼吸を研究しても何も変わらないのです…
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