「歌い手にとって喉ってどんな役割の場所だと思います?」
最近こんな質問を多くの方へしています。声優さんや、ナレーターの方にも同じようにお聞きしています。そして多くの方々「歌う場所」「声を出す場所」と返ってきます。
それが違うとは言いませんが「そう思っているうちは上手くならないかもしれませんよ」とお答えしています。
では喉って何をする場所でしょう。どんな役割があるのでしょうか。これがわかってくると、今までやっていた練習や努力が振り向いてくれるかもしれませんよ♪
喉の役割って何?
体にはたくさんのパーツがあります。肩や肘、いろんな骨、頭、目や鼻…それぞれに役割があります。体のパーツそれぞれが体の中に住む住人のようなものです。
そして今回取り上げる喉があります。(あえて声帯と言わず、喉と言っておきますね)
では喉の役割ってなんでしょうか。
喉は誰かによって奏でられる場所
ズバリ言いましょう。
体の中に住む誰かによって歌わされる場所なんです。もっとうまく言うならば奏でられる場所でしょうか。
ピアノを思い浮かべてください。鍵盤は誰かによって弾かれる場所。誰かって「指」ですよね。同じく歌い手や話し手にとって喉は誰かによって奏でられる場所なんです。
奏でるのは誰か?それが呼吸なんですよ。もっと言えば呼吸を作るいろんなパーツ。
奏でられる喉と奏でる呼吸があって、初めて歌になる。
つまり歌っていうのは歌わされた喉と歌わせた呼吸の両者の結果なんです。
ピアノの鍵盤が弾かれるのを待つように、歌わされるのを待て?
歌っちゃダメなんですね。それがどんなにうまくても、喉が歌っていたらつまらない。なんか下手でも音程や発音が曖昧でもいいなあって思う人いますよね。それは自然だから。自然な声で歌ったり話したりできる人は、喉が歌ってるんじゃなくて、歌わせらるのを待てる人なんですよ。
ピアノでも、どんなにうまくても鍵盤の方から指には近づいてこないでしょう?
これを声はやっちゃうんです。ピアノの鍵盤を見たら、下手だろうが、弾いたことがなかろうがなんだろうが、指で弾こうと思うじゃないですか?
でも、声は体が楽器だから、楽器がきちんとできていないと、呼吸がちゃんと生まれない。そうすると…歌っちゃうんです。呼吸が来るのを待てない。
待ってたら遅れるとか、ヘロヘロの声しか出ないとか…いいじゃないですか?だから練習するんですよ。
息を待てないとホラーになる…
息を待てないっていうのは、ピアノでいうと、鍵盤が指を待てなくて、鍵盤から指に近づいてくる状態。これじゃホラーですよね。
でも声を出す人、とりわけいい声出さなきゃとか、焦ってる人、義務感が強い人はこれをやっちゃうんです。
レッスンで「迎えにいくな!」って言われたことがある人もいると思うんですが、このことなんですね。つまりホラーなんです。
これをやるとどんなに上手くても、伝わらない。うまいのに、伝わらない、いい声なのに、不自然…ホラーじゃやないですか…ホラーやってませんか?
風もないのにリコーダーが鳴り出したとか…
歌わせることを覚えると世の中変わる
この感覚を掴むと本当に面白いんです。なにしろ気持ち悪い音程や音色ががなくなるんですよ。
声って音程が正しくあっていてもぶら下がったりうわずったり聞こえる厄介なもの。
つまり、誤解を恐れずに言えば、音程が合ってるなんて、あんまりたいしたことじゃないんです。
気持ち良いか、自然かの方がずっとずっと大切なんです。
良い音程と正しい音程は同義じゃないんですね。
声が自然界のものになる時…
さてどんなにヘロヘロでも、歌わされるのを待つことを覚えたとき、何が起こるのでしょう。
自然の風の音に正しい音程なんてないでしょう?
自然に奏でられた時「あっ!!」って思いますよ。その瞬間がたまらなく嬉しいんです。
自分の耳が喜ぶ。ヘロヘロ声でも喜ぶ。なぜなら、自然だから…だけでなく、練習してきたことが振り向いてくれて、どんな練習をすれば良いかがわかるんですよ。何が足りないかが自分で明確にわかるようになるから。
そうするとですね…なんと自然に思わず声が出たような音が並んでいるだけなのに、なんか正しい音程に聞こえる→音程が合っている歌のように聞こえるようになっていくんです。
以下の動画がきっと参考になると思いますよ。
練習は嘘をつく
練習は嘘をつかない…っていいますが、歌や話すことにおいてはしょっちゅう嘘をつきます。正しいとされる呼吸法や発声法、いろんな歌う技術、話す技術、滑舌やらミックスボイスを習おうとも、学ぼうとも。
高い声も出るようになったのに不自然。出ない人はもう本当に嫌んなっちゃう!ですよね。正しいことやってるのに、できないんですから。
じゃあ、なぜ正しいことをやってるのにできないのか。簡単です。