表現は「反応」からしか生まれない
表現は、反応からしか生まれないんです。
そして、反応は、何かを受け入れないと起こらない。
その受け入れる態勢や、反応を止めてしまうのが、萎縮。
だからこそ、生徒さんを萎縮させてはならないのです。
でも実際、緊張して動けなくなってしまう生徒さんもいますよね。
そんなとき、私はこうお願いするんです。
「あなたも、私のことを受け止めてください」って。
先生だって緊張していることもあるし、戸惑うこともあります。
でも、生徒さんが受け止めてくれると、こちらも自然と乗っていける。
受け止め合いが生む“波”と“声”
人は、受け止める時、自然と胸が開き、踏ん張る。
キャッチャーでも、トランポリンでも同じ。
ギターだって、本体が開いて、弦が踏ん張る。
そうして受け止め合って、その受け止めたものを
“反応”として声に返す。
その繰り返しが、歌やセリフの“波”になるんです。
これは何も精神論ではありません。
その波こそが、横隔膜の動きそのものなんですよ。
自然な波が圧力の増減を与える…それが反応なんです。
その波を止めてしまうのが、萎縮なんです。
だから絶対に、生徒さんの体や心を
閉じさせてしまってはならない。
でも一度その波に乗って歌い、話してくれたとき、
どんな人の声でも、本当に素晴らしいものになる。
「この仕事をしていてよかった」と思える瞬間です。
技術よりも先にあるのが“反応” ― だから萎縮させない
だから私は、
一方的に「良い声」や「テクニック」だけを求めることに、興味がないんです。
反応がない技術なんて、正直つまらない。
横隔膜を“意識して”動かそうとしても意味がない理由も、そこにあります。
よく「言葉のキャッチボール」と言いますが、
それはまず、受け止める態勢があるからこそ、できるもの。
その構えがあって、初めて“反応”が生まれ、
そこに言葉や声が自然に乗ってくる。
反応が表現の源だとすれば、萎縮はその真逆。
傘を閉じて雨を受けられない状態。
城壁を築いて、外からの攻撃に備えつつ、
内側からも何も出せなくなるような状態です。
だから、レッスンでは萎縮させてはいけないんです。
生徒さんの信頼を勝ち取り、お互いに受け止め合う。
その瞬間にこそ、本当の歌や言葉が生まれるんです。
これは、ただ「いい話」をしたいわけではありません。
人間って、そういうふうにできている。
だからこそ、歌がある。
ただ、それだけのことなんです。