オンライン・レッスン◆ただいま入会金無料◆

喉に余計な力が入る意外な原因『喉の力を抜けのウソと真実』

上達のアドバイス

「喉の力を抜きなさい」「喉に力を入れるな」歌を習ったり声優の養成所に通ったことがある方なら、一度は言われたことがあるかもしれませんし、特に高い声や、大きな声を出そうとすると「なんだか余分な力が入っているなあ」と思われる方も多いでしょう。しかしなぜ余分な力が入るのでしょうか?ここでポイントとなるのは問題なのは不必要な力である…ということは余分ではない力=必要な力もあるのではないか』ということに気付けるかです。

今回はそんな喉の力に対する勘違いについていくつか簡単に解説します。他にもボイトレや声楽レッスンでよく起きる勘違いについても少し書きたいと思います。

喉は誰かのかわりに頑張っているから余計な力が入る

まず本題の「必要な力」を解説する前に、そもそもなぜ力が入るのかを考えてみましょう。たとえば極度に緊張すると、それだけで喉も萎縮してしまいがちです。しかし、どんなに緊張しても、震えながらでも良い歌やセリフを披露する人もいるのも事実です。では緊張してだめになる人は…

①緊張すると脇腹が萎縮して息がきちんと入らない
②入らないから腹式呼吸だろうが、横隔膜をどう動かそうが、肺に圧力がかからず強くしなやか弾力のある息を作れない
③喉に良い息が来ない
④喉周りに残った僅かな空気をかき集めようとして喉を締め上げる
⑤ニワトリを締め上げたような声が出る
こんなストーリーのが想像できます。肺はビーチボールのようなものです。萎縮していたり、空気が入っていないと、横隔膜でどんなに肺を押しても圧力はかかりません。ですから先生に言われた通り腹式呼吸をしてもそれが無駄になってしまうわけです。
つまり、喉に力が入る理由は緊張しているかどうかは関係なく「ちゃんと息を吸えていないから」というわけです。では吸えていないのに喉の力を抜いたらどうなるか…ヘロヘロの声になるか、声が揺れるか、蚊の鳴くような声になるか…でも最初はそれでいいんです。声が揺れるということは、これから良い息を作れば良いだけですから。それを「揺らすな!」とか「大きな声で!」とか言われると負のスパイラルの始まりです。
【負のスパイラル】
力が入る→怒られる→力を抜く→怒られる→もう嫌んなっちゃう…

ここに陥る人のなんと多いことでしょうか。しかし、どんなに緊張していても、脇腹を開いてきっちり吸うことを覚えれば…その緊張がむしろ生きるようになるです。というわけで、一つ動画のご案内です。

いや私はちゃんと吸えているし、腹式呼吸も習った!でも余計な力が入る…これからが本題の喉に入れるべき必要な力についてです。

喉をちゃんと詰める力が足りないから余計な力が入る

「喉の力が足りないから喉に力が入る???」

「何いってんのか分からない」という方もおられるでしょう。なぜなら多くの人は(もちろんかつての私も)何がなんでも喉の力を入れてはいけない、喉を詰めてはいけないと思い込んでいるからです。この勘違いが原因で発声迷子、気持ちの込め方がわからない、息の支えって何だ、さらに舌根が上がるなど、どんどんわけがわからなくなっていく人も多いのです。

いや、これはあまりにももったいないです。逆に言えば、思い込みや業界のあやふやな言葉から開放され、適切の体の使い方を知り、実践すればどなたでも才能を後天的にはぐぐメルのですから。

喉を詰める力は必要!?【肺というゴムボールの栓】

喉に力が入る大きな原因のひとつとして『喉をちゃんと詰めないから』というものがあるのです。「喉を詰めちゃいけない」と言われている人の多くは、実は締めすぎや押し上げているのであって、奥へは詰めていません。ここで考えてほしいのは喉全体は肺というゴムボールの栓(せん)でもあるという事実です。

前項で述べたように、もしボールの空気が抜けていれば、栓をしてもしなくても、空気は抜けもしないし、入りもしません。しかしちゃんと空気が入っていると、栓をしないと空気は抜けてしまいます。実に多くの方が、喉という栓をしないで一生懸命お腹で押し出そうとしています。これはどういうことかといいますと…

【肺の栓をしない人は…】
●たとえちゃんと吸えてもパックリ口の開いた紙袋を潰しているようなもの(=圧力がかからず弱くて大量の息が一瞬で出る)。まさに暖簾に腕押し。

●栓が抜けているということは簡単に言えば、トランペットのマウスピースと口が離れているようなもの→音がなるはずがない
喉に力を入れるな、詰めるな…これは実に危うい言葉です。
喉の力は入れ方によってはダメ、入れ方によっては良い。詰め方によってはダメ、詰め方によっては良い…半分正解で半分不正解なのです。
なんですね。ここを見抜けないと、どんなに練習しても一生先生に怒られっぱなしです…。
さて、人は普段どんなときに喉を詰める状態になるのでしょうか。それは思わず息を呑む時や、ごくっと何かを飲み込む時などが代表例です。

喉を締める・詰める・押し上げるは全く意味が違う【だから舌根が下がらない】

締める、詰める、押し上げる…似ているようでまるで違いますよね。

  • 喉を詰める【超重要】
  • 喉を締める【重要】
  • 喉を押し上げる【ほぼ不必要】

発声で必要なのは、押し上げる以外の2つです。本当は詰めないといけないのです。やってはいけないのが、押し上げる。

喉を押し上げてしまう理由と、押し上げる力が余計である理由

なぜ押し上げるのはダメなのか、なぜ押し上げてしまうのか。

喉を押し上げる大きな原因は、肺から出てくる息をちゃんと受け止められず、栓が抜けている状態になるからです。つまり栓ならぬ喉が押し上がってしまいっているわけです。栓が抜けてしまってから、頑張っても無駄な抵抗です。でも無駄な抵抗でもしないと声が出ない。圧力の抜けた空気を一生懸命喉でかき集めて無理やり声を出す…つまり余計な力が入っている状態です。

さらに栓がぬけて溢れ出してくる息を、無理やり捕まえて声を出そうとする行為が、残っているの舌や口蓋垂でむりやり息を集めて声を出すというものです。もうおわかりでしょうか。だから舌に力が入り、舌根(ぜっこん)が上がる、すなわち余計な力なのです。

悲しいですが、本人は必死。よくあるパターンですね。

では押し上げる前の状態をきちんと作るにはどうするか。こちらの記事をご参照ください。

ただし、あえて変な声を出したほうがセリフとしておもしろ場合など、一時的に負担のかからない範囲で押し上げることはあります。ですから【ほぼ不必要】なんですね

喉を詰める&締める力【重要!】

さて、喉の力に対する誤解もとけてきたでしょうか。簡単に言えば以下のことが言えます。

喉を詰める力は、肺の栓をするため→喉を詰める
喉を締める力は主に息のスピードや量をコントロールするため

喉は栓でもある。しかし栓に大穴外開いていると息が出すぎるし、完全に穴が塞がっていると息が全く出ないで詰まる。だから適度に締めることも必要なのです。もちろん詰めすぎてもいけません。では詰め具合、締め具合のバロメーターはなんなのか。これを最後に解説します。

喉の栓 vs. 息を吐く力【息の支え】【感情】【共鳴】

まずは再確認ですが、しっかり息を吸ってボールである肺をふくらませることが基本です。(あえて膨らませないこともありますが、応用の話はおいておきます)

横隔膜で(本当は横隔膜だけではなく肺全体を圧縮するが主に横隔膜を中心とするだけ)、肺に圧力をかければかけるほど栓は抜けやすくなります。ということは、圧力をかけた分だけ喉を詰めると喉の位置は固定されるわけですね。これを「喉を下げる」と表現することがありますが、これもちょっと誤解を生みます。下げるのではなく、押し上げる分だけ詰める=動かないというわけです。

先程、思わず息を呑むときに喉を押し込む力が働くと書きましたが、「息を飲んで見つめる」というような言い方がありますよね。実はこの時、喉を奥へ押し込む力vs.下っ腹から息を吐こうとする力のせめぎあいが、すでに行われているのです。この息のせめぎあいは、大抵、自分が観客側のときに働くんです。それを自分が主人公のときに使おうと言うわけです。

【肺というゴムボールに圧力をかける力(圧縮)】vs.【圧力に耐えて喉が押し上がらないようにふんばって詰める力のせめぎあい】=【息の支え】=【感情・気持ちを込める量の変化と起伏】
  • 息を吐く圧力が勝ってもだめ、詰める力が勝ってもダメ(下記動画)参照
  • ただし、綱引きのように勝負がつかないまま揺れるのはOK=感情の起伏として現れる
  • 圧縮するほど感情強く大きく、たとえ小さい声でも言葉に圧がかかる(=伝わる声)
  • 逆に圧縮が弱いのに大きな声、高い声を出すと、傷めるか、出ないか、出ても伝わらない
  • 圧縮が大きく、のど締め具合が強いほど、息は細く強くなる=息漏れせずに強い声、高い声が出やすくなる(ただし栓は抜けやすくなったり締めすぎると咳き込むので注意)
息の支えとは、この圧縮を作るときの特に下っ腹(丹田)のことを指すことが多いですが、息の圧縮を保つ状態のために使うパーツ全てのことだと思って良いでしょう。

同じような勘違いにとにかく下っ腹に力を入れろというものもあります。下っ腹に力を入れないことが必要な声もあるんですよ。ここがわからないと息の支えの正体は理解できないはずなのですが…。息の圧縮は段階を踏まないといけないんです。というわけで、もう一本ご紹介。

【まとめ】あなたでなければできない「感情表現とリズム感」

今回書いたことは、ものすごく大切なことです。なぜなら必要な喉の力を使う、息の圧縮と圧力のコントロールが、そのまま人間の感情として相手に伝わるからです。さらにこの圧縮のスムーズな変化こそが、その人だけが持つリズム感なのです。シンコペーションがどうの、三連符がどうのというのとは別次元の根源的な、表現のテンションを作り出すリズム感です。正しく音程を出すだけでは、えらいのは作曲家。ただ意味を知って発音できてもそれは作詞家の力。あなたでなければできない、感情表現とリズムの波は肺の圧縮のリズム感にその多くが表れるのです。
自分だけのリズムとテンション、感情の表現…楽しくない訳がありませんよね♪
しかし多くの方はそれを知りません。いえ、実は子供の頃は多くの方が知っていたのです。そもそも多くの動物も人間にもとから備わっている性能なんです。それを成長する過程で多くの人が捨ててしまっているのです。それはもちろん取り戻すことができますし、それがわからないとその先のいろんなジャンルへ進めません。
しかし、そのいちばん大切な基礎の基礎を忘れたまま、立派な声、高い声、うわべのうまさ、カラオケの点数を追いかけることはどういうことなのか…そこを今一度考えてみてほしいのです。
これは我々ボイストレーナーや、声楽家などの指導者がちゃんと理解できているか、ちゃんと伝えられるか、自分もその努力をしているか…現代のレッスン現場を見ていると疑問に思うことが多いのです。どんなに正しいことでも、それがなぜ、なんのために、そして人間が豊かになり、相手も豊かにするためになっているか…忘れないでいたいと思います。

この辺りは、特に音楽大学の声楽科ではちゃんと教えて欲しいところなのですが…

 

タイトルとURLをコピーしました