感情は2種類ある ~表現の誤解を解く~
「感情をもっと出して」「もっと気持ちを込めて」
歌・セリフ・演技など、そう言われて困ったことはありませんか?
「一生懸命込めているつもりなんだけど…?」
それはあなたに感情が足りないからではなく、「感情」そのもののとらえ方に誤解があるからかもしれません。
今回は、2つの感情の種類と、「気持ちを込める」とは、一体何をすればいいのかを解説します。
頭の中の感情 vs 体の中の感情
感情には、実は2種類あります。
- ① 頭の中の感情
喜怒哀楽などの、言葉で分類できる感情。思考と結びついている。 - ② 体から生まれる感情
広がりや圧縮、息や身体のスケール・強度で現れる感情。絵画でいえば「キャンバス」と「筆圧」→何かを伝えたいという、具体的な、体の中からの信号。
このうち、表現で本当に伝わる(相手に届く)のは②の体から生まれる感情です。
広がる体は“キャンバス”、圧縮する体は“筆圧”|「気持ちを込める」の正体
表現を絵にたとえるなら、
- 体を広げる = 感情の「スケール感(キャンバスの大きさ)」
- 体を圧縮する = 感情の「強度(筆圧や色の濃さ)」
頭の中で「悲しい」と思っていても、キャンバスも筆もない状態では描けないのです。
と、覚えてください。
▼「体のスケール」や「圧縮」については、以下の記事や動画でも、詳しく解説しています。
「気持ちが足りない」と言われて悩むあなたへ
多くの人は、「気持ちが足りない」と言われると、
「もっと泣き顔をしなきゃ」「もっと怒ってるようにしなきゃ」と、①の感情(頭の中の喜怒哀楽)を頑張ろうとします。
でも、体のスケールや圧縮がなければ、どんなに“気持ち”を込めても外に出ません。
これは滑舌や呼吸にも言える
「滑舌を良くしよう」「腹式呼吸しよう」
とても大切なことです。
しかし、それらは結果であって、前提として身体のスケールと圧縮があるのです。
それを無視して「舌や唇の動きだけ」で良くしようとするのは、キャンバスも筆もないのに絵だけ描こうとするのと同じです。
実は、第一線で長く活躍されている方ほど、滑舌は曖昧だったり独特だったりします。
ところが、ちゃんと伝わるし、言葉もよくわかる。
それは、体から生まれる感情を培っているからに他なりません。
本当に伝わる感情とは
つまり、
圧縮することで強さが生まれる。
そのうえで頭の中の感情が乗ったとき、
初めて「伝わる表現」になるのです。
次回予告
次回は、
「体のスケールと圧縮が生む感情の“質”とは?」をテーマにお届けします。
感情の方向性・密度・濃淡がどのように体から生まれるのか、さらに深掘りしていきます。
▼ Xで予告していた投稿はこちら
「感情をもっと込めて」と言われて困ったことはありませんか?
実は、感情には2種類あります。
① 頭の中の喜怒哀楽
② 体からスケールと強度として現れる感情②が抜けたまま①だけで表現しようとしても、伝わりません。
— ボイストレーナー浜渦弘志 (@h_hamauzu) June 3, 2025
感情には2種類あります。
① 頭の中の喜怒哀楽
② 体からスケールと強度として現れる感情
②がないのに①だけで表現しようとしても、本当には伝わらない。