「高い声が出ない」「歌が上手くならない」…そんな悩みを抱えていませんか? ボイストレーナーの浜渦です。私もかつては、高い声が出れば歌が上手くなると信じ、発声理論を追い求めまていました。その甲斐あってかやっと高い声が出せるようになったのに、歌はつまらないまま…。そこから私がたどり着いたのは、「話すように歌う」ことの大切さです。この記事では、表現を追求することで歌が上達する秘訣をお伝えします。
高い声が出ても、歌が伝わらなければ意味がない
高い声が出せるようになった! 大きな声も出るようになった!楽譜通り歌えるようになった!でも、なぜか歌に感動がない。「こんなはずでは…」そんな経験はありませんか?
たとえ腹式呼吸や発声理論を駆使して高い声を出しても、感情や表現が伴わなければ、ただの「音」になってしまいます。楽譜通りに歌い、音程もリズムも完璧なのに、聴く人の心に響かない…。それは、歌の目的が「良い声」や「高い声」にすり替わってしまったからかもしれません。
大切なのは、技術の前に「伝えたい気持ち」を声に乗せること。表現を追求すれば、技術は自然とついてきます。
では、本当に「上手い歌」とは一体何なのでしょう? この問いの答えは、意外とシンプルです。次で、私がたどり着いた歌の本質をお伝えします。
話すように歌い、歌うように話そう
歌を上手く歌おうと考える前に、ひとつだけ意識してほしいことがあります。それは、「話すように歌うこと」「歌うように話すこと」です。
「話すように歌う」とは、動物の遠吠えのように、自由で本能的な声で歌うこと。笑い声や驚いたときの叫び声のように、頭で考えず心からあふれる声です。動物は、求愛仲間との共有のために本能的に鳴きますよね。そんな本能的な、無意識の声に、歌詞が自然に「乗ってくる」。
カラオケで、夢中でで歌えた時に友達が「何かいいね」と言ってくれた瞬間を思い出してください。そんなとき、歌った本人も、うまいとかそんなことは気にせず、楽しく自由に歌えていたことに気づくと思います。それが、本当の声の力です。もちろんカラオケの点数なんて関係ありません。
表現を追求すれば、音域や声の質は自然とついてきます。実際に、一線で活躍するプロの歌手は発声法や呼吸法など意識せず、自然な感情を届けることに集中するからこそ、技術が後からついてくるのです。ところが、まわりを気にしたり、劣等感から、うまく歌うことや、「良い声」や「高い声」が目的になってしまうと、なぜ歌うのかという根本的な理由が揺らいでしまい、たとえ上手歌えるようになったとしても、面白くもなんともないという、本末転倒なことになりかねません。
どうすればそんな声が出せるのか? 具体的な方法は、動画で詳しくお伝えしています。次では、この本能の声をさらに引き出す秘訣をご紹介します。
思わず出るような本能の自然な声を取り戻そう
「話すように歌う」とは、あなたの「思わず出る」自然な声を歌に活かすこと。たとえば、熱いものに触れて「熱っ!」と反応して出す声や、くしゃみの時に出る無意識の声。これらは、頭で考えていない、本能的な反応です。
現代人は、こうした自然な声を忘れがちです。喉が詰まった咳のようなくしゃみをしたり、抑圧的な感情が息を詰まらせたり。でも、この本能の声を呼び戻せば、歌は驚くほど自由になります。
私はレッスンで、この本来の人間の反応の声から皆さんに思い出して実践してもらっています。なぜなら、それこそが基礎の基礎であり、思わず出る感動の声を思い出してからボイトレや歌を歌ったりセリフの練習をすると、結果がまるで違うからです。
基礎があれば、シャウト、囁き、高音、裏声の切り替えなど、どんな声も自然に出せるようになるんです。さらに立ち姿は美しくなり、演技も自由にできるようになります(詳しい理由はまたの機会に)。そもそも自然界にある音や声や行動からから音楽や歌や演劇が生まれたことを考えれば当然なんですよ♪
実践:試しにやってみよう!
- 歌詞を意味も音程も考えずに、自由な波、独自のイントネーションで話す。
- 声を出さず、息だけで話してみる
- 上の方法にだんだんメロディを足してみる
- 何か思い出した時に「ハイハイハイハイ」と言うようにうなづきながら、歌詞を発声。
他にもたくさん方法はあります。レッスンでは皆さんにあった方法をご提案していますが、以下の動画も参考にしてみてくださいね。
自分の無意識への挑戦…
本能の声を歌に活かすには、無意識と意識のバランスが鍵です。動物の遠吠えは無意識に生まれますが、歌や演技では、その声を意識的に操る。これが、歌の芸術的な魅力であり、誰にでも挑戦できる面白さです。
無意識の声を操れるようになると、歌詞に自分の想いが自然に乗り、きっと聴く人の心にも伝わります。逆に、テクニックや「良い声」にこだわりすぎると、声は「わざとらしい」ものに。
第一線で活躍し続けるプロの歌手や俳優さんがが自然に歌え、話し、動けるのは、意識と無意識を融合させることで、自由に表現することが達成されるからです。
意識と無意識の融合こそ、動物から進化した私たち人間だけができる芸術表現の鍵だと思います。そしてそれは、私も、あなたも、歌が好きひとも、苦手な人も、目立ちたがりも、引っ込み思案の人も、どんな人でも挑戦できることです。もちろん才能なんて関係ありませんし、他人との比較は不要なのです。芸術は特別なものではないのです。
上手くある前に、自由で自然であることは意外と難しいことです。自由であるより、ルールを守っている方が楽なこともたくさんあります。でもそれでは面白くないですよね!自由でもあり、楽譜上のルールや台本の内容も同時に達成する。
それが無意識と有意識の融合。それが皆さんが皆さんだけの自然な声で、伝わる歌やセリフを生み出すのです。